「ウェブ」か「Web」か

共有

先日、仕事で書き物をしていたところ、「『ウェブAPI』と書かれているが『Web API』でなくてよいか?」という指摘を受けた。

私は基本的に「ウェブ」とカタカナ表記をするが、世間的には「Webアプリ」や「Webデザイン」と表記されるケースも多いことは把握している。例えば書籍タイトルを出版書誌データベースで検索してみると、「Web」の表記が非常に多い。下記のように、ここ1か月くらいの間に発売されたIT関連書籍タイトルを見るとほとんどが「Web」のようだ。(太字筆者)。

  • 経験ゼロから確実に稼げるようになる Webライターフリーランス入門講座(ソーテック社)
  • 実装で学ぶフルスタックWeb開発 エンジニアの視野と知識を広げる「一気通貫」型ハンズオン(翔泳社)
  • Webアンケート調査 設計・分析の教科書 第一線のコンサルタントがマクロミルで培った実践方法(翔泳社)
  • これからのAI × Webライティング本格講座 画像生成AIで超簡単・高品質グラフィック作成(秀和システム)
  • Webデザイナーのためのモーションデザインことはじめ(ボーンデジタル)

指摘されるまであまり意識的に考えたことはなかったが、そもそも私が「ウェブ」とカタカナ表記するのは、英語でwebは一般名詞(普通名詞)だと認識しているからかもしれない。一般名詞であるならば、日本語で書く際にも「Web」ではなく「ウェブ」でよいのではという考えだ。翻訳者という仕事柄、どうしても原文英語と訳文日本語を対応付けて考えてしまう。

英語圏の表記

そこで、そもそも英語圏でどう表記されるのか、まずはオックスフォード辞書(OALD)で確認してみた。結果は下記の通りだ(太字筆者)。英語で固有名詞は大文字で書き始めるのがルールなので、辞書を見る限り、一般名詞(web)とも固有名詞(Web)とも取れるようだ。例文を見ても両方が掲載されている。

1. the Web, the web
(also the World Wide Web)
[singular] a system for finding information on the internet, in which documents are connected to other documents
to surf/browse/search the web
The service is available to anyone with access to the web.
on the Web I found the information on the Web.
I did a Web search to find the best price.
a web browser/server

(引用元:https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/web、2022-12-20)

しかし翻訳者としての感覚で言うと、もう一般名詞扱いされているケースが多いのではという印象を持っている。そこでGoogle BooksのNgram Viewerを使い、書籍内でどう表記されてるのかを時系列で調べてみる。

まずはそのまま「Web」と「web」で比べる。1980〜2019年の期間で比較した結果が次のチャートだ(URL)。なおwebには本来の「クモの巣」の意味もある点に注意したい。

続いて「a web page」と「a Web page」とを同期間で比べてみる(URL)。

World Wide Webが登場してしばらくは「Web」(赤線)が多かったが、その後急速に減って「web」(青線)が逆転している。この大きな傾向は「a web/Web browser」などで調べても同じだ。90年代終わりや00年代初めあたりから英語圏でwebが一般名詞と認識され始め、遅くとも10年代には多数派になったと考えてよいのではないか。

日本語の「ウェブ」と「Web」

冒頭で述べたように日本語では今も「Web」という表記は多い。この理由は推測でしかないが、当初固有名詞としてWebが受容されて表記として定着し、そのまま今日に至っているのかもしれない。

次は日本語でNgram Viewerを調べてみたいところだったが、残念ながら日本語は対応していない。そこで代わりにGoogle Trendsを使ってみる。Google検索で使われたキーワードの人気度を時系列で見られる。2004年以降で、まずは「Webページ」(青)と「ウェブページ」(赤)を比べてみる(URL)。

続いて「Webサイト」(青)と「ウェブサイト」(赤)だ(URL)。

どちらを見ても、00年代には「Web」が多かったが、最近は差が縮まってきたという感じだろうか。いったん「Web」で受容されたかに思われた言葉も、徐々に変化しているようである。


共有