鳥見散歩のすすめ

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サイボウズに入社して自己紹介をする機会が何度となくあり、その度に「趣味は鳥見散歩です」と伝えた。要は散歩しながらのバードウォッチングであるが、「バードウォッチングです」と言わないのはあくまで散歩が主だからである。

この鳥見散歩を始めたのは2020年からだった。コロナ禍での外出自粛が背景にあった。せめて健康維持に散歩くらいはしたいが、それだけではつまらないので、鳥でも見てみようと妻と始めたのである。

東京ではあまり野鳥は見られないと思われるかもしれない。しかし実はかなりの種類の鳥がいる。スズメやハトはもちろん、ヒヨドリ、ハクセキレイ、シジュウカラ、ヤマガラなど、ちょっと思い出しただけでも30以上は名前を挙げられる。

“清流の宝石”とも呼ばれるカワセミですら都心近くの川や池で見られる。次の写真は隅田公園の池で撮ったカワセミである。スカイツリーのすぐ脇を流れる川でも何度か目撃した。

東京のような都市にいる鳥は「都市鳥」と呼ばれるが、都市鳥だけ見ても十分に楽しめる。季節によっても見られる鳥は違う。冬に渡って来るカモだけでも何種類もいるので、飽きない。たまにカワセミのようなレアキャラにも出会える。しかも散歩をメインにするなら、「今日はレアに出会えなかったけど、1万歩も歩けたからいいか」と納得感も得られる。

実に健康的かつ経済的な趣味であるとは思いませんか?

鳥見散歩のコツ

そこでまだ4年程度ではあるものの、その範囲での経験から、鳥見散歩のコツをいくつか書き留めておきたい。

散歩がメイン

上でも書いたが、あくまで散歩がメインである点を忘れないようにすべきであろう。長時間立ち止まって観察したり撮影したりはしない。

きれいな鳥の写真が撮れると、確かにうれしい。しかし写真撮影はそれ自体が深遠であり、意識的に遠ざけておかないと、そっちが趣味になってしまう恐れがある(それでもよいが)。

スマホ用の望遠レンズを使う

鳥見散歩を始めた当初、野鳥を見つけると双眼鏡を使い、「頭は黒! 腹は白! 目の横に黒い筋!」と特徴を(一緒にいる妻に)伝えていた。妻は急いで図鑑で調べるのだが、その間に鳥は飛んでいってしまう。さらに、少し経つと特徴も忘れてしまうので、後で図鑑で調べても特定できない。

そこでスマホ用の望遠レンズを購入し、特徴だけでも撮っておくようになった。これで図鑑を使った特定が楽になった。「写真撮影はしないんじゃないのか!」と言われそうだが、きれいに撮るのが目的ではなく、鳥の特徴の記録が目的である。

私はクリップでiPhoneに取り付けられるKenkoの8倍レンズ(下記写真)を2年くらい使っている。特徴を記録する目的には十分で、本ページに掲載した鳥の写真はすべてはこのレンズを使っている。ネット通販で探すと3、4千円くらいで購入できるようだ。

Kenko 望遠8倍レンズ

画像検索で調べる

スマホのカメラで撮影する利点は、即座に画像検索ができることである。画像検索で何の鳥かが特定できる場合がある。例えば次の写真では、撮った鳥をGoogle Lensで検索したところ、「アオサギ」という結果が出た。

Google Lensで画像検索

野鳥図鑑で調べる

ただし画像検索では、結果が正しいかどうかは分からないことがある。よく似た鳥は多いからだ。そういう場合は野鳥図鑑に当たることになる。私も何冊か買ったが、今メインで使っているのは日本文芸社の『野鳥図鑑』だ。さまざまな出版社から野鳥図鑑は出ており、サイズや絵柄などの好みで選べばよいだろう。

『野鳥図鑑』(日本文芸社)

野鳥図鑑を1冊持っていると現場で便利だが、とりあえずウェブでよいというのであれば、サントリーが公開している「日本の鳥百科」が調べやすい。鳥のサイズや住む環境のほか、鳴き声が再生できるので、特定に役立つ。

見やすい場所を散歩コースにする

野鳥と聞くと、木がたくさんある場所が思い浮かぶだろう。確かに野鳥は多いのだが、実は逆に見つけにくい。声は聞こえるものの、姿が見えないケースは多いのだ。そのため、森のような場所よりも、木がまばらで見通しの良い公園や広場、川沿いを歩いた方が発見しやすい。

また、高い木が多い場所も判別がしにくい。下から見上げる形になるため、逆光でどの鳥も黒く見えてしまうのである。以前(高い木が多い)明治神宮を散歩したとき、逆光で判別できないのに加え、ずっと見上げていたので首が痛くなってしまった。

季節で散歩コースを選ぶ

鳥見散歩が一番楽しいのは冬である。まず、木の葉が散り、野鳥を見つけやすい。そして渡り鳥もやって来る。特にカモ類は、東京の川や池でも何種類も来る。冬は水辺が楽しい。

春もまた別の楽しさがある。雛である。ツバメは家の軒先に巣を作るので見つけやすいが、ツバメ以外の鳥の雛がいることもある。雛は色が薄く、高くて細い声で鳴くので、春の散歩中はよく耳を澄ましておくとよい。親の後を付いていくので分かることもある。

東京で気に入っているコース

東京の隅から隅まで試したわけではないが、私が気に入っている鳥見散歩コースを2つ紹介する。普段は家の周辺を散歩しているものの、たまにはこういった場所まで遠征する。

皇居周辺

九段下駅から北の丸公園に入って南に抜け、さらに北桔橋門から皇居に入り、二の丸庭園を経て大手門から出るようなルートである。どのくらい寄り道するかにもよるが、5〜8千歩くらいになる。

北の丸公園や皇居の木立にはヤマガラやシジュウカラのようなカラ類がいるし、池や堀には冬にカモ類が多い。ジョウビタキも見られる。皇居の広々とした大奥跡ではハクセキレイがよく歩いている。

井の頭公園

吉祥寺駅で降りてマルイの脇の道から公園に入り、池の橋を渡って西に向かい、その後で南下して「小鳥の森」を回ってから戻るルートである。こちらも5〜8千歩くらいにはなる。

ここは池が大きいので、さまざまな水鳥が見られる。冬にはカモ類も多い。さらに南の端にある「小鳥の森」では、名前の通りエナガやアオゲラといった野鳥が見られる。

世間ではシマエナガが人気のようだが、シマエナガはエナガの亜種である。エナガはわざわざ北海道まで行かなくても会える。

推し鳥

ちなみに私の“推し鳥”はスズメである。

まず姿がかわいい。スズメをじっくり見る人はあまりいないかもしれないが、目はまん丸で、ほっぺに黒い丸がある。小鳥なので威圧感もない。さらに飛ぶときは「ギュイ、ギュイ」と気合を入れながら一生懸命羽ばたく。

散歩をしていると、ほぼ毎回出会えるのが良い。スズメはどこにでもいると思われるが、実は人家のある場所にしかおらず、例えば山奥にはいない。人とはつながりの深い鳥なのである。

スズメの素晴らしさを知りたければ、ぜひ下記のブログで写真を見ていただきたい。


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